ふだん、何気なく読んでいる楽譜。
いざ書くとなると、「こういうときどうするんだっけ・・・?」となること、ありませんか。
ちょっとルールを知っているだけでも、楽譜の見栄えはずいぶんと良くなります。
知っていると便利なルールをご紹介していきます。
(2)音符は、音楽の流れを大切にするために、必要に応じて、しばしばパルスの単位を超えて記述されます。
(3)4拍子系のみ、パルスをさらにまとめて2つと見做し、記譜することができます(本来のパルスは4つ)。
パルスとは
拍子は、時間を刻む一定のパターンを指し示したもので、1小節を単位としています。たとえば3/8拍子は、その曲が、8分音符が3つずつ、「強・弱・弱」というパターンで時間を刻みながら進んでいくことを示します。
この「強・弱・弱」のようなパターンは、通常、2〜4つの大まかな刻みをもって現れます。「強・弱」の2拍子系、「強・弱・弱」の3拍子系、「強・弱・弱(やや強)・弱」の4拍子系といったようにです。この大まかな刻みは、パルスと呼ばれます。拍子を感じながら音楽を聴いたり演奏したりするのにもっとも感覚をつかみやすい単位です。
このパルスは、拍子記号の分子(拍)と一致することも多いです(2/2拍子、3/8拍子、4/4拍子等)。このようにパルスと拍が一致するものは、単純拍子と呼ばれます。一方で、パルスと拍子記号の分子(拍)が一致しないものもあります。6/8拍子、9/8拍子など、1小節内の拍が多いものです。これらは、「(強・弱・弱)(やや強・弱・弱)」「(強・弱・弱)(やや強・弱・弱)(やや強・弱・弱)」といったように、いくつかの拍をまとめる(複合させる)ことで、2拍子系、3拍子系といった大まかな刻み(パルス)で捉えることができるようになるので、複合拍子と呼ばれます。
浄書においては、このように大まかな刻みであるパルスを大事に考えます。視覚的に、拍子を生き生きと捉えやすくしてくれる単位だからです。
楽譜を読むとき、何気なく読み分けているタイとスラーですが、浄書上は、こんな風に区別して描いています。
タイ
タイが始まる音の符頭(たま)の1〜2時あたりから、終わる音の符頭(たま)の10〜11時あたりへつなぎます(曲線の先が音符の中央へと向かっていく感覚です)。曲線にあまり膨らみは持たせません。音がまっすぐ伸びるイメージです。
スラー
スラーが始まる音から終わる音までを包み込むようにかけます。音の高低に照らして自然な放物線をなすように描きます。音がふんわりと連なっていくイメージです。
タイとスラーの同居
スラーの始点や終点にタイでつながれた音がある場合、基本的にはどちらの音もスラーの中に入れます。タイでつながれた音は、音楽上ひとつの音だからです。
符尾(ぼう)の長さの基本は、3間半(1オクターブ)。
加線のつく音符は、長さを伸ばし、第3線に符尾のお尻がつくようにします。
3間半の長さの原則を守るより、音が捉えやすくなります。
アーティキュレーション記号は、ひとつの音符に対して、どのように演奏するかを指示するものです。
アクセント、スタッカート、テヌート記号などがそれにあたります。
基本的な配置
通常、符頭(たま)側に配置しますが、声部が複数ある場合、混乱を避けるため、符尾(ぼう)側(=他の声部を邪魔しない位置)に配置します。
また、横位置は、記号の中央を符頭(たま)の中央に必ず合わせるようにします。
アーティキュレーション記号どうしの配置
同じ音符に対し、アーティキュレーション記号が複数つく場合には、符頭(たま)の近くから、スタッカート→テヌート→アクセントの順に配置します。小さな記号から順番に置くと考えると覚えやすいです。
アーティキュレーション記号とスラー
アーティキュレーション記号のついた音符にスラーがかかっている場合、基本的にはアーティキュレーション記号をスラーの内側に収めます。
しかし、アクセント記号(アクセント、マルカート<山型アクセント>等)に限り、スラーの始点・終点ではスラーの外側に配置します。高さのある記号のため、無理にスラーの内側に配置してしまうと、スラーの形が不自然になり、譜面が読みづらくなってしまうからです。
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トム・ゲルー/リンダ・ラスク 著 元井夏彦 訳 西尾洋 監修
「エッセンシャル・ディクショナリー 楽典・楽譜の書き方」ヤマハミュージックメディア
一般的な記譜のルールを網羅的にまとめた辞典です。このルールが唯一絶対というわけではなく、国や出版社によって、細部についての考え方が異なる場合ももちろんありますが、持っていて損はない1冊。